ANAホールディングスは、福岡県西区の玄界島でドローン宅配サービス実現に向けた検証(実証実験)をLINE Fukuoka、自律制御システム研究所(ACSL社)、NTTドコモ、ウェザーニューズ、福岡市と共に2019年8月1日に実施した。
900グラムまでの荷物を運ぶことが可能。最長20キロの距離を飛行可能
今回、ACSL社のドローン(全幅117センチ、高さ55センチ)を使用した。ANA仕様のドローンは重さが8.2キロあり、最大搭載0.9キロまでの重さのものをドローンで運ぶことが可能となっている。最大速度は秒速20メートルで、時速だと72キロとなり、最長で20キロまでの距離を飛ばすことができる。今回の実証実験では、ドローン向けのモバイル端末を無人航空機に搭載した実用化実験も兼ねている。
LINEを活用して注文した海産物を玄界島からドローンで配送
このドローンを使うにあたっては、釣船茶屋ざうお本店(福岡市西区大字小田)前でバーベキューを楽しんでいる女性グループが、LINEを使ってアワビとサザエを注文・決済する。注文を受けた後、6.4キロ離れた玄界島の漁港で搭載準備を行い、LINEで注文した海産物をドローンを使って、ざうお本店前のビーチに約10分で配送された。
到着後すぐにアワビとサザエを注文者に届けられた
「ANA」と書かれた専用のボックスに入ったアワビとサザエを無事に女性グループの元に届けることができ、すぐに海産物のバーベキューが始まった。
LINE FUKUOKA社が提供している、ストレスフリーな注文決済サービス「お席で注文・決済」機能を使用しているが、この機能は、飲食店において、注文・決済・調理完了のお知らせを「LINE」のトークルーム上で完結できる機能となっており、例えばフードコートなどにおいては並ばずに自分の席から注文して、現在話題になっている「LINE Pay」で決済し、調理完了の通知が届き次第、受け取りに行くことで料理がピックアップできる仕組みになっており、今回はこの仕組みを「離島から新鮮な業界がドローンで届くBBQ場」という実証実験に活用した。
今回は2ルートで複数のドローンを同時にオペレーション
今回、一般的なドローンで使われるコントローラーは使わずに、目視外飛行でオペレーションセンターで飛行プランを入力することで、離陸の指示を出すだけで、NTTドコモのLTE通信やGPSを活用して指定の場所まで運んでくれる方式で検証が行われた。
今回の検証は、7月30日~8月2日まで実施されるが、ANAホールディングスによると、玄界島~ざうお本店前砂浜(6.4キロ)、玄界島~能古島キャンプ村(10.3キロ)の2ルートで複数機を同時にオペレーションした。運航距離も10キロを超えたルートでの目視外飛行となり、実際に利用するシーンを思い描きながら使っていく実装の場を用意したそうだ。
「エアモビリティ」という中で街の中でも空を使ったビジネスにチャンスがある
ANAがドローンに取り組んでいる理由について、ANAホールディングスのデジタル・デザイン・ラボの津田佳明チーフディレクターは、「2016年12月にドローンプロジェクトが立ち上がり、ANAは旅客機を使ってエアポート(空港)とエアポート(空港)を結んでいるが、エアポートだけでなく、エアモビリティという中でシティポートという形で街の中でも空を使ったビジネスについてチャンスがあるのではないかということで、このようなドローンを使った実証実験を行っている」と話した。
ANAホールディングスは、国土交通省が2018年9月に改正した「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」に基づき、海上における飛行において今年7月18日に補助者を配置せずにドローンを目視外飛行させる承認を得ており、ドローン事業化に向けた検証を継続して実施している。
■各社の主な役割
ANAホールディングス:ドローンの運航管理 (本検証の代表事業者)
LINE Fukuoka: 物流における注文・決済機能の提供
自律制御システム研究所(ACSL): 機体の提供および運航サポート
NTTドコモ: ドローンの上空飛行に係る LTE ネットワークの提供、および docomo sky の運航支援基盤による上空の電波状況を考慮した運航計画の策定支援
※「 docomo sky 」は、株式会社 NTT ドコモの商標
ウェザーニューズ:気象情報サポートと有人航空機(ヘリコプター)監視のための飛行位置情報提供
福岡市: 検証対象となる地域及び関係者との調整等
(鳥海高太朗)