ANAホールディングスは、2020年4月28日に2020年3月期の決算を発表した。グループ連結の売上高は1兆9742億円(前年同期比4.1%減)、営業利益は608億円(前年同期比63.2%減)、経営利益は593億円(前年同期比62.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は276億円(前年同期比75.0%減)となった。新型コロナウイルスによる影響が2月以降見られたが、通期での黒字は確保した。
3月の1ヶ月で国際線7割、国内線6割の利用者が減少
第3四半期までは累計売上高は過去更新を記録していたが、新型コロナウイルスによる影響で第4四半期単独では前年同期から978億円減となった。特に3月の影響が大きく、国際線が約7割、国内線が約6割の利用者が減少した。
国際線:大きな影響が出たきっかけは3月11日のWHOのパンデミック宣言以降
国際線では、旅客数は前年比5.8%減の941万6000人、旅客収入は前年比6.7%減の6139億円、利用率は前年比4.1%減の72.9%となった。第3四半期まで新規路線の開設や大型機材の導入など計画に沿った成長戦略が進んだが、第4四半期では新型コロナウイルスによる影響で需要が大幅に減少した。特にWHO(世界保健機関)がパンデミック宣言をした3月11日以降に大きな影響があった。第4四半期単独の旅客数は対前年で31.3%減少した。
国内線:2月下旬のイベント自粛や休校要請以降から減少に転じた
国内線では、旅客数は前年比3.2%減の4291万6000人、旅客収入は前年比2.4%減の6799億円となった。利用率は前年比2.1%減の67.5%となった。今年1月までは堅調な需要動向が継続していたが、2月下旬には政府からのイベント自粛や延期、休校要請などで需要が急激に減少し、第4四半期単独の旅客数は旅客数だけで22.5%減少した。
LCC:海外LCCとの激化や香港線・韓国線の低迷、新型コロナで減収
LCC事業においては、昨年10月にバニラエアの運航が終了し、ピーチブランドで統一されたが、主力の台湾線で海外LCCとの競争が激化したことに加え、香港線や韓国線などの影響、更に新型コロナウイルスの影響による運休・減便が行われたことにより、旅客数は前年比10.6%減の728万 8000人、旅客収入は前年比12.5%減の819億円となった。利用率は前年比3.2%減の83.1%となった。
2020年3月期は無配に、2021年3月期は未定
ANAホールディングスは、新型コロナウイルス感染症がグループの業績に与える影響は甚大であり、現時点で終息時期が全く見通せない状況にあることから、手元流動性を確保することが喫緊の課題であると考え、当初は75円の配当を予定していたが、2020年3月期の配当は無配とすることを発表した。
2021年3月期の連結業績予想については、新型コロナウイルスの収束時期が不透明で、合理的な見積もりが困難であることから現時点では未定とし、開示が可能となった段階で速やかに開示することを明らかにした。 配当予想額についても同様に未定とした。
9500億円の資金を確保することで資金繰りに問題なし
新型コロナウイルス関連についての財務面については、引き続き運航規模を抑制し、燃油費等の運航関連費用を削減する他、役員報酬・管理職賃金の減額や従業員の一時帰休の活用等で人件費を削減する。また、航空機等の設備投資を精査・抑制し、実施時期も見直しすることを明らかにした。財政面については、今年4月に民間の金融機関から1000億円の借入を行うとともに、融資枠として既存の1500億円に加えて、新たに3500億円のコミットメントライン契約で5000億円となっている。また政府系金融機関からの資金対応融資3500億円の実行に向けて、具体的な協議を日本政策投資銀行と行っており、合計9500億円を確保することで資金繰りは当面問題ないとANA ホールディングスの福澤⼀郎取締役常務執行役員と話した。
福澤氏は、一時帰休は4月末時点でグループ会社22社3万5000人が対象となっており、5月末くらいまでにグループ35社で4万2000人くらいを目処に実施する予定とし、雇用は維持しながら今の危機を乗り越えていきたいが、新卒採用については抑制しなければならない可能性があると話した。
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(鳥海高太朗)