ドイツのLCC(格安航空会社)であるエアベルリンが破産手続きを申請したというニュース報道が流れた。エアベルリンのホームページに掲載された声明によると、当面はドイツ政府とドイツ最大の航空会社であるルフトハンザドイツ航空やその他のパートナーがサポートすることで運航が継続されることになり、既に購入済みの航空券もそのまま使えるほか、新規に航空券の購入をすることも可能となっている。筆者も2011年8月にデュッセルドルフからニースまで利用している。
エアベルリンは、ドイツのベルリン(テーゲル空港)とデュッセルドルフの2つをメインの拠点として、ドイツ国内線及びヨーロッパ内路線に加え、長距離路線としてドイツからアメリカ、カリブ海、中東などへの路線にも就航している。ドイツでは2番目の規模の航空会社で、現在ではUAEのエティハド航空から29.1%の出資を受けていたが、これ以上のファイナンスのサポートを受けることが難しくなり、今回の申請に至った。
LCCでありながらも、長距離路線にも就航しているほか、エアベルリンはJALなどが加盟している航空連合「ワンワールド」にも加盟している。長距離路線においてはフルフラット型のビジネスクラスを導入しているなど、何も知らない人にとってはフルサービスキャリアだと思っている人も多いはずである。だが実際の航空券の販売スタイルにおいては、LCCの販売スタイルになっており、最安値運賃の場合では預ける手荷物・座席指定など全て有料のオプションとなっている。
私も一度だけであるが、2011年8月にドイツのデュッセルドルフからフランスのニースまでの区間をエアベルリンに乗ったことがある。その当時はドリンクとスナックが無料で提供されていたが、せっかくだったので有料機内食のタイカレーを注文してみたところ、とても美味しかったことを今でも覚えている。中長距離路線ではドリンクと機内食が提供されるようだ。
実際に乗っているとフルサービスキャリアとLCCの中間のような気分にさせられた。乗った人からの評価は概ね好評だった。短距離路線だけでなく、ドイツとアメリカを結ぶ長距離路線を運航しており、私がテレビや雑誌の企画でLCCのみで世界一周ルートを作って欲しいという依頼を受けた際に非常に重宝する航空会社ということもあり、過去に色々調べていたが、逆にスケールが大きすぎるということも感じていた。
LCCは、基本的に大きく2つに分類される。まずはエアバスA320やボーイング737などの小型機を使い4〜5時間以下の国内線や近距離国際線を中心としたビジネスモデル。日本のジェットスター・ジャパン、ピーチ、バニラエアなどはこのビジネスモデルに当てはまる。もう1つは、5時間〜8時間程度の中距離路線を中心としたLCCである。エアアジアX(タイ・エアアジアX、インドネシア・エアアジアXを含む)やスクートなどが当てはまる。スクートは最近、タイガーエアと合併をしたが、中距離路線のスクート、短距離路線のタイガーエアとそれぞれのブランドを確立した後の合併ということでエアベルリンとは状況は異なるが、成功しているLCCの多くは短距離か中長距離のどちらかに特化している場合が多い。両方をやりたい場合には別ブランド(エアアジアとエアアジアXのような)の方がいいと私は思っている。
加えて、フルサービスキャリアのアライアンスに加盟したり、出資を受けていることもあるが、エティハド航空とコードシェア便として運航したりするなど、フルサービスキャリアでもLCCでもないビジネスモデルを明確に確立できなかったことが、今回の破産手続きの申請に至った可能性が高いと思っている。
今後、もしルフトハンザドイツ航空が支援することになれば、将来的にワンワールドから脱退する可能性も高い。その場合に、LCCとして残すのか、それとも吸収合併してしまうのかは今のところはわからない。当面の運航継続は発表されているが、運航休止に追い込まれる可能性もゼロではない。LCCなのに唯一アライアンスに入っている航空会社ということで注目していたが、このような状況になって残念である。
(編集長 鳥海高太朗)