佐賀空港(九州佐賀国際空港)において、2019年3月26日に空港内では国内初となるトーイングトラクターの自動走行テストを公開した。
今回、ANAが空港地上支援業務のSimple & Smart化に向け、ANAと佐賀県が佐賀空港をイノベーションモデル空港と位置づけ、新しい技術を活用した働き方改革を推進するプロジェクトを進めており、その一環としてANAと豊田自動織機による国内初のトーイングトラクターの自動走行テストが行わた。トーイングトラクターは手荷物などを搭載する貨物のコンテナを牽引するのに使われる。
周回ルートと直線ルートの両方でテストが行われた
今回のテストでは豊田自動織機製のトーイングトラクターを使い、ターミナルの手荷物仕分け場から機側(飛行機の近く)までを想定した約300メートルの周回ルートと片道約100メートルの直線ルートの2つで行われた。障害物(マネキン・三角コーン)を検知しての自動停止、他の車両の追越や交差なども含めた形での自動走行テストとなった。
運転手が随時、手動操作で介入できる条件付き自動走行で往復・周回したが、今回の自動走行トーイングトラクターには、周囲の状況や自車及び目的地の位置を的確に認識し、安全かつ正確に走行するための技術として、2次元/3次元LiDARによる障害物検知と自動停止・回避機能、路面パターンマッチングとGPSによる自己位置推定・誘導機能を採用した車両が使われた。最終的に自動走行技術の活用を通じて、提携反復型業務である、コンテナ牽引車両の運転業務から、人の役割が解放されている状態を目指す。走行実験は3月26日~4月5日までの間で実施される。
イノベーションの発想の原点は「働き方を大きく変えていく必要がある」
自動走行テストの実施前には、ANAの清水信三専務執行役員と佐賀県の山口祥義知事が出席し、九州佐賀国際空港イノベーションモデル空港化についての記者会見が行われ、ANAの清水専務取締役は「生産年齢人口の減少による担い手の不足についても地方空港を中心に顕在化している。労働集約型産業である航空業界の働き方を大きく変えていく必要があるというのが今回のイノベーションの発想の原点になっている。空港内のランプエリアを中心とした地上支援業務においては残念ながらこの数十年間、仕事の仕方というのが全く変わっておらず、技術革新の流れを確実に捉えた上で、人と技術の融合、役割分担の見直しを図ることで人の役割というのを単純型からより付加価値の高い仕事へシフトしていくことが業務のシンプル&スマート化の推進が必要だと思っている」と挨拶した。
また、佐賀県の山口知事は「九州佐賀国際空港、この前の日曜日で初めて80万人(2018年度)を突破した。最初に空港が開港した時はANAさんとお付き合いを初めて最初は20万人くらいだった。その頃から信頼関係を深め、これから世界の空港オペレーションのモデル空港として選ばれたことで非常にワクワクしている。今、第4次産業革命、AI・IoTといったものの発信地になりたいと強く思っている。働き方改革においても人材不足の部分でどのようにIoTの力を借りながら立ち向かえるかという取組が始まると思う。この空港の成長をANAさんと共に歩んでいきたい」と挨拶した。
ロボットスーツやリモートコントロール式航空機牽引のデモも実施
またプロジェクトの趣旨説明に加えて、既に成田空港・伊丹空港・那覇空港などで今年2月より実用を開始している「ロボットスーツを活用した作業負担軽減」、今年4月中旬より訓練開始予定の「リモートコントロール式航空機牽引・移動装置」といった導入技術のデモンストレーションも行われた。ロボットスーツを活用した作業負担軽減のデモでは10キロの重りを入れたスーツケース(スーツケースの外見も含めて15キロ程度)も女性グランドハンドリングスタッフが楽々持ち上げてコンテナに収納する姿が見られた。
(鳥海高太朗)