ANA(全日本空輸)は、羽田空港近くの大田区羽田旭町(京浜急行穴守稲荷駅近く)に将来の航空需要の増加に備え、世界最新鋭の設備を有する訓練施設「総合トレーニングセンター(仮称)」を2017年7月着工、2020年3月併用開始予定で新設することを発表した。
8階建てで運航に関わる全ての訓練が可能に
敷地面積は約3万3000平方メートルを、建物面積は約5万9000平方メートルの地上8階建てを計画。詳細は現在検討中であるが、訓練エリアと見学エリアに分けられ、訓練エリアでは羽田周辺に点在している訓練施設が集約されることで、実際の飛行機の到着から出発までを想定し、運航に関わる全ての社員は合同で訓練できる環境での訓練が可能となる。
カテゴリ別の主な概要は以下の通り
■運航乗務員(パイロット)
名称:Full Flight Simulator(フルフライト シミュレータ)
概要:悪天候や機体不具合事象を資格に加えて実機と同様の動きでシミュレーションできる操縦訓練機器
■客室乗務員(キャビンアテンダント)
名称:Motion Mock-up(モーションモックアップ)
概要:日本初導入となる、飛行中の揺れなどをリアルに再現できる機内サービス訓練などを行う世界最新鋭の可動式機体訓練機器
名称:Real Fire Fighting Trainer(リアルファイヤーファイティングトレーナー)
概要:日本初導入となる消火訓練機器。ギャレー・ラバトリーなどに実際の火を使用した火災状況を再現し、熱さ等も実感しながら具体的な対応を学ぶことができる。
■空港
整備部門では最先端のVRやAR技術を活用した新たな整備訓練、旅客部門では実際の空港カウンターや出発ロビーにおける実際の接客状況での訓練、貨物部門では実物の特殊車両機材を使用した貨物等の積み付け訓練などを予定している。
■共通
また、障がいをお持ちのお客様のケアを学ぶ施設の新設を予定している。
一般の見学エリアも開設予定
また見学エリアでは、これまで一般には非公開としていた運航乗務員用のシミュレーターや客室乗務員用のモックアップなどの施設を公開し、ANAの安全への取り組みや努力や挑戦の歴史の紹介、シートなどのプロダクトなどを展示するエリアの設置を計画している。
人材育成の拠点となる施設に
ANAの平子裕志社長は会見で「人材育成における攻めのコストとして、2019年以降に予定されている羽田増枠に向けて備えを強化していきたい。全ての業務は空港が原点であることから、忠実に空港や機内の環境を再現し、実践に近い訓練や教育を実現させていきたい」と意気込みを話すと共に、一般向けにこれまで非公開だった施設を公開する見学施設においては「ANAブランドや航空業界を身近に感じていただく為に、お客様や地域社会に開かれた施設にしたいと考えている」と話した。
これまでは、ANAでは機体メンテナンスセンターでの機体工場見学が人気を集めているが、2020年以降は新たな見学施設として注目を集めることになりそうだ。
関連URL:ANA
(鳥海高太朗)
- 編集長's eye BIRD SEAビュー
- 今回、ANAが新たに総合トレーニングセンター(仮)を建設するのは、京浜急行穴守稲荷駅から徒歩6分の場所になる。近くにはヤマト運輸の「羽田クロノゲート」があり、こちらも無料で見学できる社会見学スポットとして人気がある。
オープン後は、両方を一緒に見学するなどといったことも想定されるだろう。特に新しい施設では、運航乗務員用のシミュレーターや客室乗務員用のモックアップが公開されることで、将来的にパイロットや客室乗務員になりたいと思うお子様が多く出てくることを期待したいところである。今から3年後のオープンが楽しみである。
編集長 鳥海高太朗