2017年9月5日午前11時、羽田空港からニューヨークのJFK空港へ向かうJAL(日本航空)6便(ボーイング777-300ER型機:機体番号JA743J)が離陸中に左エンジンの不具合が発生し、その後引き返すことになり、左エンジンを停止させ、房総沖で燃料を減らした後(投棄)、1時間9分後の12時9分に羽田空港に着陸した。
航空局が重大インシデントに認定。バードストライクではなかった
当初はバードストライクという報道が先行していたが、到着後にエンジンを確認したところ、エンジンの奥にあるタービンブレード、ケースに損傷などがあることが確認され、6日夜に航空局による重大インシデントとして認定された。バードストライクの状況は確認できなかった。今後は、運輸安全委員会と共に原因究明が行われることになる。また、離陸直後に滑走路横の芝生が燃えていたが、現時点ではその理由がわかっていない。エンジンから出た炎が原因なのか、落下した部品からなのか疑問があり、このあたりも今後原因がわかると共に見えてくるだろう。なぜ起こってしまったかに関してはまだ現時点で情報が少ないことから、ここでは触れないが、いくつか感じたことを書かせていただく。
上空での燃料放棄はすぐに気化するので環境面の問題はない
着陸にあたり燃料を投棄した映像がテレビなどで流れている中で環境に大丈夫なのか?という声が聞こえているが、上空で燃料を捨ててもすぐに空気中で気化してしまうので環境への影響はない。安全を期して、海上で投棄していたが、一定の高度以上であれば地上で捨てても影響はない。
また、燃料を捨てる大きな理由としては、着陸において最大着陸重量を上回らないように機体を軽くする為に捨てている。特にニューヨーク便ということで燃料が沢山搭載されていることから一定量を捨てることになった。エンジンが1発正常に動いていれば飛行機には問題なく、一刻も早く着陸するよりは安全に着陸する為に燃料の投棄が行われた。関係者に話を聞くと、機内やエンジンなど炎や煙が出続けている場合には一刻も早く最寄りの空港に緊急着陸となるが、今回はそのような状況ではなく、最大着陸重量を下回ったことを確認して羽田空港に着陸した。この手順はマニュアル通りであり、安全を第一に考えた対応だったと言える。
緊急着陸から4時間後には再出発
12時9分に着陸した後、搭乗者は13時前くらいにオープンスポットからバスで国際線ターミナルに戻ったが、一般的にはこのまま運航を打ち切り、欠航になってしまう、もしくは大幅遅延での再出発となるが、緊急着陸から約4時間後(定刻の6時間35分後)の17時15分にボーイング777-300ER型機の代替機で再出発した。整備、給油、乗員の調整、荷物や機内食の再搭載、運航に必要な書類の作成・提出などを考えると、着陸から4時間後に出発できたのは非常に評価できることであり、日本のフルサービスキャリアの航空会社らしい対応だったと思う。もちろん遅延しないのがベストであるが、最善は尽くしたのは間違いない。ニューヨークには予定より6時間49分遅れの17時24分に到着した。
私も昨日は夕方に所用で羽田空港国際線ターミナルにいたのだが、代替便になった関係でその折り返し便のニューヨーク→羽田線のJL5便も羽田空港に16時25分到着する予定が6時間23分遅れの22時48分に到着となったが、夕方の時点で到着案内のボードを見て、22時台の到着予定になっていることを確認した時は、当日中に戻れたことで影響は最小限で済んだと感じた。
今後、原因究明をしっかりした上で、なぜ起こったのかを検証して、同じことが起こらないように願うばかりである。
編集長 鳥海高太朗