10月12日に首都圏を直撃した台風19号により、東京都奥多摩町日原地区へ向かう道路が寸断されていることから、東京都から要請を受け、ANAホールディングス、ACSL、NTTドコモが東京都に協力し、10月27日に生活必需品及び健康補助食品をドローンを使って運搬した。
玄界島や五島福江で実証実験した技術をそのまま活用
ANAホールディングスでは、2016年4月に新しいイノベーションを創造する 「デジタル・デザイン・ラボ」を発足させ、ドローンやアバターの開発を通じてエアライン視点での「エアモビリティ」の実現を目指している。ドローンにおいては、2018年より福岡県の玄界島、今年からは長崎県の五島福江で実証実験を行っており、事前にルートを登録することで、パソコンからの操作のみで補助者なしの無人地帯での目視外飛行が可能なレベル3での実証実験が行われている。
今回、東京都からの要請を受け、実証実験ではなく「災害時ドローンによる物資輸送の実用」という形でのドローンの利用となった。日本で初めて災害時の物資輸送にドローンが使われた。東京都によると、奥多摩町町長には54世帯約100人弱が生活しているとのことで道路が寸断され、人が一人通れるくらいの広さで歩いて通過できるが車での移動はできないとのこと。寸断されている直前の場所からのドローンでの運搬となった。日原地区では、電気や水道などのライフラインは復旧している。
ドローンはACSL社製のもので、玄界島や五島福江と同じものが使われ、最大搭載量は2キロまでとなり、今回は生活必需品と健康補助食品を載せて合計3往復飛んだ。直線距離で約2.5キロの距離を片道約5分、往復10分程度で運んだ。従来の実証実験では基本的には海上で行われたが、今回は山岳地帯で障害物(木や山)などがあることから、飛行高度も海上よりも高い140メートルまで上昇させた後、目的地へ向けて飛行した。
今回のドローンを使った運搬には、小池百合子東京都知事や河村文夫奥多摩町町長も視察した。
(鳥海高太朗)