飛行機は自動車と異なり、バック(後退)ができないことから、けん引車を使って誘導路までプッシュバックした後、自走で滑走路へ向かうことになっている。
一般的なけん引車は、動力を用いて自動車の運転同様に運転席から操作し、飛行機を動かすことになるが、ANAグループでは新たな試みとして、リモートコントローラーを使った遠隔操作での航空機の移動・けん引を目指す実証実験を2018年10月から行っていたが、2019年7月4日より佐賀空港において実際の運航便でリモートコントローラーを使った遠隔操作による航空機のけん引がスタートした。今回導入されたけん引車は、ドイツのmototok社製の「SPACER8600」という機器で、電気で動く仕組みになっている。フル充電で30回のプッシュバックが可能となっている。同機器はボーイング737型機、エアバスA320型機、A321型機に対応している。
今回、7月4日のANA454便羽田空港行き(ボーイング737-800型機)で初めてお客様や手荷物を載せた定期便で使用された。見た目も小さくなり、これまでのようにグランドハンドリングスタッフがけん引車には乗り込まず、少し離れた場所から飛行機と共に歩きながらリモコン操作をすることで所定の位置までのプッシュバックを行った。
3日間の訓練で操作できる。CO2の削減にも繋がる
ANAの担当者によると「リモコン操作によって、従来の車の中の運転席からのプッシュバックでは死角が多い業務で神経を尖らせながらの作業だったが、これを導入することで飛躍的に業務が簡単・単純になると共に、電気駆動になることでCO2の削減やメンテナンスのコストも削減されるメリットがある」と話す。航空機と同じ地上を歩きながら業務することで視野が広くなることはもちろん、コスト面でのメリットがあるようだ。
また、グランドハンドリングスタッフの訓練についても「従来は操作する為の訓練に時間をかけておこなっていたが、訓練の中身が簡単になったことで早く現場の業務ができるようになった。佐賀空港では、座学研修と実際の航空機を使った訓練(夜の駐機時間帯)を3日間行った」とのことで、従来よりも短い期間でプッシュバック業務に従事できることになる。
ANA454便のプッシュバックを担当した女性グランドハンドリングスタッフは感想として、「今までと比べて、自分の視界で後ろの方まで見ることができるので、とっても見やすくて操作がしやすく今までと違うと思った。特に雨の日は従来の方式だと、線を探したりすることに神経を使っていたが、新しい方式だと自分の目で確認できることで、神経を使うことが減ると思う」と話した。プッシュバックのオペレーション効率にも繋がるだけでなく、安全面もアップし、加えてCO2削減できることで導入のメリットは大きい。最終的にはプッシュバックの人員を1名減らすことを目指している。
ANAグループでは、佐賀空港を先進技術を「試す」・「集める」・「繋げる」イノベーションモデル空港と位置づけ、遠隔操作による航空機のけん引など様々な先進技術の導入を進めている。
動画は、ANAのツイッター「ANA Group News」内で掲載されている。
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(鳥海高太朗)