ANAホールディングスがピーチへの出資比率を引き上げ、連結子会社化する事を発表した。ANAホールディングス子会社のバニラエアと合わせると日本のLCCで最大の路線数となり、今後ANAグループのスケールメリットがどのように活かされていくのか注目される。
ANAHDがピーチの株式を追加取得 連結子会社化
LCC(格安航空会社)ピーチの現在の株式保有比率は、ANAホールディングス(以下ANAHD)が38.7%、香港の投資会社ファーストイースタンアビエーションホールディングス(以下FE)が33.3%、産業革新機構が28%となっている。ANAホールディングスにおいてピーチは「持分法適用会社」で、関連会社の一つという関係性にとどまっていた。
きょう2017年2月24日に関西空港で行われた会見で、ANAホールディングスは上記2社から株式を304億円で取得し、保有比率を67.0%に引き上げピーチを連結子会社化する事を発表した。株式の取得額は304億円で、譲渡後の出資比率はFEが17.9%、産業革新機構が15.1%となる。
株式の取得は2017年4月10日を予定していて、 各国の当局の許認可の取得を条件としている。
ANAHD片野坂社長「ピーチの企業価値の高まりをANAHDの中に取り込んでいきたい」
ANAHDの片野坂真哉社長は会見で、「ピーチの独自性を活かしながら『第二の創業期』として成長を加速させるようANAグループとしてサポートする。日本の観光産業・経済の発展に貢献したい」と述べ、ピーチへの更なるサポートを表明した。
さらに、記者団からの連結子会社化の狙いについての質問に対しては、「ピーチは今後2020年に向け更に企業価値が高まると思っており、ピーチの企業価値の高まりをANAHDの中に取り込んでいきたい。」と述べ、ピーチの子会社化がANAHDの株主にとってメリットがあることを強調している。
出資2社「ピーチの発展を確信・引き続き株主としてサポート」
ANAHDにピーチの株式の一部を譲渡することになった2社は次のようにコメントを発表している。
FE会長 Victor Chu氏コメント
「Peachの共同出資者として、我々ファーストイースタンはPeachが過去6年間に達成してきたことを大変誇らしく思っております。ANAHD、産業革新機構と同様に我々からの揺るぎないサポートを得ることで、Peachは今後、ますます強力に発展していくことを確信しております。」
産業革新機構 代表取締役社長 勝又幹英氏コメント
「経営陣や従業員の皆さんの多大なる努力と貢献の結果、Peachが日本にLCCを根付かせた革新的な会社へと成長したことに対し、心より感謝を申し上げます。今後はANAグループから一層のサポートを得つつ、従来存在しなかったLCCの新たなビジネスモデル構築を加速させ、Peachがアジア全体の空を変革していくことができるよう、引き続き株主としてサポートしていきます。」
ピーチ井上CEO「これまでの独自性はしっかり維持する」
ピーチの井上慎一CEOは会見の中で、ピーチの成長の原動力ともなった「独自性」は今後も確保される見通しを示した。
「株主保有比率は変わっても、株主は変わらない。ピーチの成功の原動力は他のエアラインにはない『独自性』。株主3社からは今後もこれまでの独自性はしっかりと担保するとの力強い約束をいただいた。ピーチは資本構成の変更以降もANAHDと連携し、両社のシナジーを発揮しながら事業の拡大と発展を一層加速できると確信している。これまでと変わらずピーチの独自性をしっかりと活かしながら、リーディングLCCとしてアジアの架け橋となることを目指し、日本のみならずアジアの皆様に『空飛ぶ電車』として笑顔をお届けする。」
ピーチ子会社化で「ANAグループ」のLCCの路線数が国内最大に
ANAホールディングスは100%出資のLCC・バニラエアを子会社に持つ。バニラエアは成田空港を拠点としているが、2017年3月には関西空港から函館(季節運航)、奄美大島行きの路線を開設するなど、今後のピーチとの関係性が注目されているが、ピーチとバニラエアは別ブランドでの運航を継続する。
ピーチがANAの子会社になることで、ANAグループのLCCは2社で国内線19路線、国際線が20路線(2017年3月26日時点)となる。カンタス航空・日本航空などが出資するジェットスター・ジャパンの路線数(国内線16路線・国際線8路線)を上回り、ANAは日本最大のLCCグループを傘下に持つことになる。
ピーチがANAグループのスケールメリットを活かしつつ、最大の魅力である「独自性」を失わずに成長していくことができるのか、両社の手腕に注目していきたい。
(五十嵐 貴文)
- 編集長's eye BIRD SEAビュー
- 関西空港で行われた会見では、まもなく就航5年を迎えるピーチの井上CEOから「独自性を維持する」という強い意気込みを感じた。マイレージ、コードシェア、システムの統合などといったことはANAグループの連結対象会社になっても一切やらないということも明言した。
海外での知名度においても、アジアのLCCオブザイヤーに選ばれたことで台湾などの東アジアだけでなく、先週末に就航したばかりのバンコクでも上がっているとのことだが、質疑応答で海外での知名度を上げる際に「ANAグループのLCC」という言葉を使うのかという質問に対しても井上CEOからは「ピーチの知名度が上がるのであれば、ANAのお力をお借りしたい」と答えた。スクートがシンガポール航空出資のLCCであることが認知されている今、ピーチは「ANAのLCC」として海外での認知そして更なるブランド構築に貢献する可能性が高いだろう。
ANAホールディングスの片野坂社長は、ピーチとバニラエアが切磋琢磨して共に成長し、将来的にANA、ピーチ、バニラエアの3社で売り上げ1兆円を目指していきたいと話す。更なる成長へ向けてまもなく3月1日に就航5周年を迎え、6年目のピーチが動き出す。
編集長 鳥海高太朗